40歳のときだった。

職場の女性に言われた言葉

『ヒロトさんって実年齢より若く見えますね』

「いくつに見えるんだい？」

『30代前半くらい』

へぇ、そんな事言われたのはじめてだよ。

『奥さん羨ましいなぁ』

そうなんだ…そういうふうに思うんだ

でも、奥さんはもう好いてくれないんだよ

触れてもくれないんだよ

そう心で呟いた

世界で1番大好きで結婚した筈なのに

世界で1番遠い女になってしまった。

22歳で恋に落ち、5年交際をし、愛を重ねて

27歳で結婚をした。

その後子供が産まれたが30歳にしてセックスレスになった。

「ね、そろそろしようよ」

『疲れてるから』

お決まりの常套句のようだった

「子供を親に少しだけ預けてデートでも」

『親に預けてまでは』

断られ続けて、諦めと寂しさを感じながら

何処の夫婦もこんなものだと自分で納得させた

実際に育児と仕事も大変だったし

そんな時に友人達と飲みの席での会話で営みの話になった時だった。

『奥さんとすればいいじゃん　俺、毎週してるけど。』

衝撃的だった　

子供が出来たら女性はしたくないものだとばかり思い、

自分の世界がいかに狭小かを

それからは何度も何度も話し合いをした

それでも彼女の答えは "NO" だった

自分でもよく暴力に向かわなかったなと

今更ながら感心する

暴力振るったことなんて一度も無いけど。

大好きなのに触れられない

大好きなのに愛してくれない

大好きなのにセックスできない

こんな、枯れかけの50代ならまだしも

30歳のやりたい盛り　

唯一セックスをすることを許された相手に拒否されて

心からポッキリ折れてしまった

彼女の顔を見るのも苦痛になり

帰宅するのが段々遅くなっていった。